第7回サーモインフォマティクス研究会開催報告
(文責:幹事 清)
2025年3月17日(月)10:00から12:00
第7回サーモインフォマティクス研究会を開催いたしました。今回はオンラインでの開催となり、参加者は37名と、前回の2倍以上に増加しました。関心の高まりがうかがえ、大変嬉しく思います。
発表1
「機械学習を用いたヒートポンプ性能予測における特徴量選択の影響解析」
九州大学の宮崎隆彦先生より、日本冷凍空調学会論文集に掲載された原著論文
「機械学習を用いたヒートポンプ性能予測における特徴量選択の影響解析」の紹介がありました。
本研究では、ヒートポンプのCOPを予測するにあたり、特徴量の選択がモデルの精度に与える影響を詳しく解析しています。異なる特徴量グループを作成し、それぞれに複数の機械学習モデルを適用することで、最適なモデルと特徴量の組み合わせが検討されました。
その結果、特徴量の選び方によって予測精度が大きく変わることが確認されました。線形回帰やステップワイズ線形回帰は堅実な精度を示す一方、カーネル関数を用いたガウス過程回帰やサポートベクター回帰は、少ない特徴量でも高い精度を発揮することが明らかになりました。
さらに、シャープレイ値(SHAP値)を用いた解析により、COPに大きな影響を与える主要な特徴量として、凝縮器の冷媒出口温度や圧縮機の吐出温度が特に重要であることが判明しました。本研究の成果は、特徴量の選択が予測精度を左右するメカニズムを定量的に示すものであり、より効率的な予測手法の構築に貢献する可能性を示唆しています。
発表2
「円形流路内垂直沸騰流の実験的評価および深層学習による沸騰熱伝達率の予測」
電気通信大学 榎木研究室の上村栞生さんより、「円形流路内垂直沸騰流の実験的評価および深層学習による沸騰熱伝達率の予測」についての発表がありました。
本研究では、円形垂直沸騰流における熱伝達特性を実験的に解明し、さらに深層学習を活用した熱伝達率の予測手法を提案しています。研究の背景には、沸騰二相流を利用した熱交換技術の高効率化という課題があり、特に環境負荷の低いHFO冷媒(R1233zd(E))を用いた垂直沸騰流の特性を明らかにすることが目的です。
深層学習とガウス過程回帰を組み合わせたモデルを構築し、従来の経験式では対応できないデータ範囲でも高精度な予測が可能であることを示しました。さらに、このモデルは未観測の条件下でも不確実性を考慮した予測が可能であり、今後の熱交換器設計や運転最適化において有用であることが示されました。
一方で、さらなる精度向上のためには、データセットの拡充や適切なバッチサイズの選択が鍵となることも指摘され、今後の課題として議論されました。
最後の総合討論では、機械学習を活用する際の実践的なテクニックを中心に活発な議論が交わされました。第7回となる今回は、参加者が大幅に増えたこともあり、非常に有意義な研究会となりました。今後もこの場を通じて、サーモインフォマティクス分野の発展に貢献できればと思います。次回もぜひ、多くの皆さまのご参加をお待ちしております!
講演資料については以下からダウンロードが可能です。(委員限定)
動画については以下から確認・ダウンロードが可能です。(研究会参加者限定。リンク公開1週間限定)
